〜2013東京オープン 最終日〜

By Shin Uesugi

皆さんこんにちは!2013東京オープンは、14日に全日程が
終了しました。今大会の目玉、5ラウンドに行われたLewis-南條の
頂上対決は、Lewisさんがピースダウンながら猛攻を仕掛け、
南條さんを攻め倒すことに成功。


4ラウンドまで全勝だった南條さんが負けたことにより、最終ラウンドが
終わるまで誰が優勝するか分からない、非常に面白い展開になりました。
5ラウンド終了時点では、Lewisさんが4.5ポイントで単独トップ。それを
南條さん、Alexさん、山田さん、桑田さんがそれぞれ4ポイントで追う形に。

そして、運命を分ける最終ラウンドのペアリングは。。。

1番ボード:山田弘平(4) vs Lewis Andrew(4.5)

2番ボード:南條遼介(4) vs Averbukh Alex(4)

3番ボード:三ツ矢直人(3.5) vs 桑田晋(4)

2番ボードは、中盤からエクスチェンジアップとなった南條さんが
何事もなく寄せ切り、いち早く5ポイントで大会をフィニッシュ。
Shinが優勝すると予想していたAlexさんを倒し、その
予想クラッシャーぶりを発揮しました

注目の的であった一番ボードは、Lewisさんが
Kings Indianの中盤をうまく指し回し、山田さん相手に
ピースアップとなりました。このままLewisさんの単独優勝かと
思ったShinは、月曜日の授業に備えるため眠りにつきましたが、
どうやらそこから山田さんが驚異の粘りを発揮したようで、
最終的にはドローとなったようです。3番ボードもドローに落ち着き、
最終結果は以下のようなものになりました。

優勝: Lewis Andrew南條遼介

3−4位: 山田弘平桑田晋

タイブレークで優勝の盾はLewisさんの手に渡ったものの、
ポイント的には南條さんも同率優勝。第45回と由緒ある
東京オープンのタイトルと、賞金1万5千円ずつを獲得しました。

3−4位にはLewisさんからドローを奪った二人組、山田弘平さんと
桑田晋さんが入賞。それぞれ盾と賞金5千円をGETし、1988年生まれの
プレーヤーの層の厚さを再認識させてくれました。


表彰式の様子。左から山田、南條、Lewis、桑田(敬称略)

JCAレートが1645のため、LewisさんはAクラスでも1位に!
噂によると、日本語が苦手なLewisさんは日本のチェス大会に
出るのを躊躇していたそうですが、これだけ強いのであれば
もっと積極的に大会に出てもらい、日本のプレーヤー達に
刺激を与えていってほしいですね。言語の壁があっても、
世界共通のルールで皆が楽しめるのは、チェスや他の
スポーツならではのことだと思います。


Aクラス入賞者!左から酒井、Lewis、ヒーバート(敬称略)

Bクラスは、Aクラス3位入賞も果たしたヒーバート・ケンジ君が優勝!
ケンジ君は、最終ラウンドにレーティング約300上の
吉村謙治さんとの「ケンジ対決」を制し、Upsetランキングに
何度も顔を出した勝田裕貴さんと、大会を通して良い
パフォーマンスを残した川中陽輔さんを、僅か1/2ポイントという
僅差で抑えました。年末には今年のジュニアチャンピオンである
阿部真大君らと共にドバイで行われるWorld Youthにも
参加されるようなので、12/17-29はそちらの方も
チェックしていきたいと思います。


Bクラス入賞者!左から勝田、ヒーバート、川中(敬称略)

15名が参加した一日コースは、女性陣の活躍が目立ちました。
まずは、元オリンピアード日本女子代表である
WCM長谷川愛美さんが、4戦全勝で堂々の1位!
今年の女子選手権では6位と苦汁をなめましたが、
それを忘れさせるような今回の全勝優勝は見事です。
2−3位には、同じく元オリンピアード女子代表の
石塚美来さんと、今年の小学生選手権に出場した
トゥルーター・怜君がランクインしました。


一日コース入賞者!左から石塚、長谷川、トゥルーター(敬称略)

そして最終的なUpsetランキングは、以下のようになりました。

2013東京オープンUpsetランキング

1位 吉田晴貴 vs 坂井延寿 1-0 3R Upset値:811

2位 勝田裕貴 vs 高橋幹雄 1-0 3R Upset値:498

3位 石川貴久 vs 釼持徹 1-0 1R Upset値:375

4位 唐堂 vs 勝田裕貴 1/2-1/2 5R Upset値:346.5

5位 Averbukh Alex vs WFM 内田成美 0-1 1R Upset値:345

合計55人のチェスプレーヤーが参加した東京オープンは、
大盛況のうちに幕を閉じました。
優勝したLewisさんと南條さん、おめでとうございます!!
そして参加/運営した皆さん、お疲れ様でした!!

それでは皆さん、また次の機会まで、Good Luck and Have Fun!!

















と、言いたいところですが。。。

Shinはよく大会のレビューをしていますが、今大会では
毎度のことながら問題が起きてしまい、プレーヤーの
混乱や不満を生んでしまった事件がありました。
Shinはこれを「2013東京オープン深夜ペアリング修正事件
と名付け、どういうことが起きたのかを具体的に
説明していきたいと思います。

~事の発端~

事件が起きたのは東京オープン二日目の夜、
10月13日午後11時54分。
東京オープンでは、午後のラウンドが終わった後に
次の日のペアリングを出すという手法が取られており、
この日も例外ではなく、4Rが終わった後に5Rの
ペアリング予定がJCAお知らせ掲示板にアップされました。
しかし、もうすぐ深夜という11時54分に掲示板で大幅に
修正されたペアリングが告知され、参加者達の
プレパレーションにかなりの影響を与えることになりました。

~Byeの取り消し~

ペアリングが大幅に修正された背景には、「Byeの取り消し」という
行為がありました。修正前のペアリングは、あらかじめ5Rを
Byeすると言っていたあるプレーヤーを抜いて組んだペアリングです。
しかし、そのあるプレーヤーが急遽5Rに参加できることになり、
そのプレーヤーを入れてペアリングを組んだ結果、今回の
ような問題を生んでしまいました。

Byeの取り消しは、基本的にTDの承認なしではすることが
できません。特に賞金がかかってくる後半のラウンドでのBye取り消しは、
アメリカの大会などでは認めないことが推奨されています。
これは、「既にポイントを落としていて、更にByeで1/2ポイント
落としてるようじゃ入賞できない!」=>「Byeを取り消して入賞ねらうぜ!」
のような事柄を防ぐためのルールと言えるでしょう。

恐らく(これは当事者しか分かりませんが)そのプレーヤーは予定が空き、
5Rの時間帯を暇つぶしに使うくらいならチェスをしたいな〜、という
軽い感じでTDに頼んだのでしょう。しかしTDがこれを認めてしまったため、
ペアリングが深夜に修正、参加者達を混乱させてしまいました。
もちろんByeの取り消しを頼んだプレーヤーにも非がありますが、
一番の問題はTDがこれをあっさりと認めたことでしょう。

~ペアリングが修正された時間~

事態が悪化してしまった理由の一つが、修正されたペアリングが
公表された時間です。午後11:54は、体力温存のために
準備を早めに切り上げて寝た体力温存組と、睡眠時間を犠牲に
してまでも準備を続けた深夜組が最も分かれる時間帯と
言ってもいいでしょう。今回のケースでは、ペアリングが
修正されたせいで体力温存組が満足なプレパレーションを
行うことができず、深夜組に比べると不利(&混乱)な状況
で5Rを戦うことになってしまいました。

世界で活躍する選手を育成するための大会

今年の東京オープンは、「世界で活躍する選手を育成
するため」と銘打った大会でした。日本の大会では珍しい
90分+1手30秒加算という長い持ち時間も、国際大会での
スタンダードな持ち時間に選手達を慣れさせるためです。
国際大会では試合前日にペアリングが発表され、選手達は
それを見た瞬間から膨大なプレパレーションを始めます。
そのような大会では、プレパレーションが試合の6-7割を
決めると言っても過言ではありません。世界で活躍する
選手を育成するための大会で、選手達のプレパレーションを
狂わせるようなペアリング修正、及びByeの取り消しは、
Shinは認めるべきではなかったと思います。

体力温存組と比べてプレパレーションをする余裕があった
深夜組のプレーヤーも、今まで行ってきたプレパレーションを
やり直す必要があり、そのプロセスに影響が出たことは
一目瞭然です。運営側は軽い気持ちでペアリングを
修正したのかもしれません。ですが、レートの上昇や
盾、賞金、そしてタイトルをかけて戦っているプレーヤーの
ことを少しでも考えていたのならば、ペアリングを修正する
という行為はあくまで最終手段で、極力避けるべきことだと
気付いたのではないでしょうか?

ペアリング修正で起きることは想定内

チェスの大会では想定外なことが色々起こります。
例えばあるプレーヤーが試合前日の夜に高熱を出して
しまい、試合ができなくなるプレーヤーを出さないために
その夜にペアリングを修正したりなど。。。しかし、今回のケースでは、
Byeを取り消してペアリングを修正するかどうかの決定権は
全て運営側にあり、ペアリングを修正した時に起こり得る問題を
想定することも容易だったはずです。もし運営側が
「世界で活躍する選手を育成するための大会」で、
「ペアリングを修正した時に生じるプレパレーション関連の
問題を全て想定」していて、下した決断がこれなら、
Shinは首をかしげざるを得ないでしょう。

ペアリングを修正しない方法もあったのでは?

ペアリングを修正するのが最終手段だったとして、他に何か
方法はなかったのでしょうか?Shinが真っ先に考え付いたのは、
「運営スタッフの誰かや、見学者からプレーヤーを一人募り、
Byeを取り消した人と試合をさせ、Byeを取り消した人には
結果問わず1/2ポイントを与え、レートは勘定する」という
方法です。これならByeを取り消した人も公式戦ができ、
ペアリングを修正する必要もありません。今大会では
一日コースの参加者が奇数だったので、一日コースで
不戦Byeとなった人と一日コースの持ち時間で組むことも
できたでしょう。もし一日コースの参加者が偶数で、見学者や
スタッフに相手をできる人がいなかったとしても、そもそも
後半(4-6)ラウンドでByeを取り消すこと自体が通常なら
ありえないことなので、その時は申し訳ないですがByeとして、
5Rは観戦に回ってもらっても良かったんじゃないでしょうか。

以上が、「2013東京オープン深夜ペアリング修正事件」の概要と
それについてのShinの個人的な感想です。他にも
言いたいことがあったような気がしますが、一応
大学の課題もやらなければいけないので、今回はこの辺りで
東京オープンのレビューを終わりたいと思います。
相変わらず反省点を突きまくるようなレビューになりましたが、
2013東京オープンには去年を上回る人数が参加し、
更に観戦勢という新勢力の登場により、大変賑やかな
大会になっていたことは事実です。

次のビッグトーナメントは、11月2日から行われる
ジャパンオープン。今年のジャパンオープンも、去年の
37人を超える、活気に満ちた大会になるといいですね!
では皆さん、今度こそ、Good Luck and Have Fun!!

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