9/21 BCSレクチャー

By Shin Uesugi

皆さんこんにちは!Shinは先週、バークレーチェススクール(BCS)で、
レーティング800-1400のプレーヤーを対象としたレクチャーを
行いました。レクチャーは、Shinが事前に決めておいたテーマを
使い、生徒達に質問しながら進めるという対話式のものでしたが、
このページではそのような手法を取ることができないので、
ネット版として改訂したものを書いてみました。
ちなみに1時間以上のレクチャーの内容を詰め込んだので、
時間がある時に読んでください!

基本的なタクティクスを組み合わせるテクニック

今回のレクチャーのテーマは、
基本的なタクティクスを組み合わせ、決定的なものに仕上げるテクニック」です。
まずは、Shinが選んだ6つの「基本的なタクティクス」について説明します。

1.フォーク

フォークは、2つ以上の駒を同時に攻撃するタクティクスです。


白のNc7+で、黒はキング、クイーン、そしてルークが同時に
攻撃されていますね。チェスではキャスリングを除き、
1手につき1つしか駒を動かすことができません。
このポジションで黒は、一番価値の高いキングを
動かすしかなく、白にクイーンを取られてしまいます。

2.ピン

ピンとは、長射程を持つ駒で、相手の駒を釘付けにするタクティクスです。


このポジションで白はBb2と指し、黒ナイトが動けないことを利用して
駒得することができました。ピンとスキュアーは、駒の位置関係に
違いがあります。ピンの特徴は、後ろに控えている価値の高い駒を
守るために、価値の低い駒が身動きが取れない状態になっていることで、
駒の位置関係は長射程の駒=>価値の低い駒=>価値の高い駒です。

3.スキュアー

上のポジションを、ピンからスキュアーに変えるには
どうすればいいでしょう?少し考えてみてください。






キングとナイトの位置を入れ替えれば、白はスキュアーを
使って駒得するポジションになりますね。
黒は価値の高いキングを逃がす必要があり、キングが動いた後に、
白はビショップを使ってナイトを取ることができます。
ピンとは反対に、スキュアーでの駒の位置関係は
長射程の駒=>価値の高い駒=>価値の低い駒です。

4.ディスカバードアタック

ディスカバードアタックとは、長射程を持つ駒の利きを
塞いでいる味方の駒を動かして利きを通すことにより、
駒得を狙うタクティクスです。


白はビショップの道を遮っていたルークを動かし、ビショップの
利きを通してチェックをかけながら黒クイーンも同時に攻撃しています。
相手の意表を突きやすいタクティクスなので、是非覚えておきましょう。

5.ガードを外す

これはその名の通り、駒や重要なマスを守り、ガード的な
役割を果たしている駒を攻撃することで、駒得を目指すタクティクスです。


白はe4と指し、c7のビショップを守っているナイトを攻撃。
ナイトが逃げたのを見計らって、ビショップを取ることができました。

6.ディコイ

ディコイは「囮」という意味で、味方の駒を囮に使い、
相手の駒の気を逸らしたり、特定のマスにおびき寄せるタクティクスです。
次のポジションは、白番2手メイトです。どうすれば良いか、考えてみてください。







正解は1.Ra8+!!で、黒がKxa8と取ったあとに2.Rc8でチェックメイトになります。
a2のルークをディコイ(囮)として使い、隅っこのマスにおびき寄せていますね。

以下の6つが、Shinが選んだ基本的なタクティクスです。

1.フォーク
2.ピン
3.スキュアー
4.ディスカバードアタック
5.ガードを外す
6.ディコイ

では早速、これらを組み合わせた強力無比なタクティクスを
見ていきましょう。まずはこのポジション。白番3手メイトです。



どこかで見たことあるようなポジションですね。
具体的な手を考える前に、まずこのポジションで使える
可能性のある、基本的なタクティクスは何かを考えてみましょう。
このポジションでは、3つの基本的なタクティクスを組み合わせて
白が勝つことができます。少し時間を使って、考えてみてください。





では答えを。このポジションでは、ディスカバードアタック
ガードを外す、そしてディコイを組み合わせることで、
白が3手で勝利できる、強力なタクティクスを作り出すことができます。



では次のポジション。このポジションでは、3つの基本的な
タクティクスを組み合わせ、白を勝利に導くタクティクスが出来上がります。



残っている駒達を数えれば、黒が優勢に見えますね。
黒キングは動ける場所が多く、チェックメイトにできる
ポジションには見えません。となると、白はどうにかして
黒クイーンを取る方法を考えなければいけませんが。。。
まずは、このポジションで組み合わせれる3つのタクティクスが
何かを考えましょう。白には長射程の駒が二つありますね。
長射程の駒が役に立つタクティクスと言えば。。。





では答え合わせ。このポジションでは、ピン
スキュアー、そしてディコイを組み合わせます。


a4のポーンを取る2.Rxa4は、クイーンの逃げ場所であったa2の
地点のガードを外したと考えることもできるので、
ガードを外すと答えた方も正解としましょう。

では次のポジションへ。今度はShinが指した試合のポジションです。

このポジション、見覚えがある方もいるかもしれません。
実はこれ、6/30の試合解説で扱った試合からのポジションです。
Shinはここで1.Rg1と指しました。基本的なタクティクスを
使った罠を、2つ仕掛けています。それらが何か、分かりますか?





正解は、ピンディスカバードアタックです。


Shinが仕掛けた罠を、黒は1...Kf8で避けようとしています。
逆に、g1にいるルークに紐がついていないので、Shinのビショップは
黒クイーンにピンされていますね。黒はキングがgファイルから
避難したので、今度こそhxg4とビショップを取れそうです。
黒キングが白マスに動けば、ディスカバードアタックを
決められるんですが。。。





正解は、黒キングをビショップでチェックできる白マスに
おびき寄せる、ディコイです。


次のポジションも、Shinの実戦から。6/1の試合解説のものです。

手番は白。かなり多くのタクティクスを組み合わせているので、
基本的なタクティクスがどのように組み合わされているかに
注目しながら、試合の流れを見てください。



1.Bg5



まずは黒ルークを攻撃。後ろに黒ビショップが控えているので、
長射程=>価値の高い駒(ルーク)=>価値の低い駒(ビショップ)の
位置関係を利用してスキュアーを狙います。更に、黒ルークが
f7などに逃げれば、e6のガードが外れますね。
e6のポーンを例えばRxe6などとして取れれば、
c4の白B=>e6の白R=>g8の黒Kの位置関係を利用した、
ディスカバードアタックが決まる可能性が出てきます。

1...Rg6



相手も負けじとタクティクスを組み合わせて反撃してきます。
まずはルークを動かしたことにより、e7のビショップの利きを開いて
g5の白ビショップを狙うディスカバードアタック
b7のビショップとg6のルークの利きを利用して、g2のポーンも狙っています。
例えば白が2.Bxe7とすれば、...Bxg2+として、白のクイーン、キング、
ルークをフォークすることができます。

g6の黒ルークとg5の白ビショップの位置関係は、
長射程(ルーク)=>価値の高い駒(ビショップ)=>価値の低い駒(g2のポーン)
からスキュアーとも呼べますし、g2のポーンを取られたら
キングとクイーンにフォークがかかることから、
長射程=>価値の低い駒(ビショップ)=>価値の高い駒(g2のポーン)
ということでピンと呼ぶこともできます。

2.Bxe7 Re8



黒は、タクティクス勝負に負けると踏んだため、2...Bxg2+と
しませんでした。どういうことなのか、見てみましょう。



3.Rxe6 Rxe6
4.Qxf5



白は3.Rxe6として、c4のビショップの利きをこじ開けようと
しました。それに対して黒はRxe6と取りましたが、e6の
ルークがピンされています。ピンされている駒が
動けないことを利用して、その駒を集中砲火するのが、
ピンをうまく使うコツです。ちなみにこの局面では、
白はQf7+やQf8+などとしてチェックメイトする手も狙っています。

4...Bxg2+
5.Kxg2 Qb7+



黒も必死に抵抗します。まずは4...Bxg2+とビショップを
ディコイとして使い、白キングをg2におびき寄せた
後に、5...Qb7+としてキングとビショップをフォークしました。
クイーンがビショップを取り、e7まで移動できれば、e6のルークを
守りながらf7、f8といった黒キングに近いマスをカバーできます。

6.Bd5 Qxe7
7.Re1 1-0



ピンされていて動けないe6のルークを、クイーンとルークで
集中砲火することによって、白の駒得が確定しました。
できれば黒キングがf7に動いてルークを守りたいところですが、
白クイーンがfファイルを支配しているのでそうすることもできません。
負けを悟った黒は、ここで投了しました。

レクチャーの締めくくりは、19手の比較的短手数な試合解説。
これは「ドリーム・ゲーム」と呼ばれる試合で、超強豪チェスプレーヤー
ながら一度も世界チャンピオンのタイトルを手にしたことのない、
GM David Bronsteinが夢の中で指し、起床直後に
手を書き留めたと言われる試合です。

朝起きて、まず最初にすることがチェスの手を書くこととは。。。
チェスをやる人って、変人が多いような気がするのは自分だけでしょうか。

では、Shinの解説を読みながら、ドリーム・ゲームをお楽しみください。


以上が9月21日にShinが行った、BCSのレクチャーです。
1時間以上のレクチャーを詰め込んだので、とんでもなく
長くなってしまいましたが、このレクチャーには初級者が
上達するためのヒントが散りばめられています。
何事も基本が一番大事なので、これからは
今回カバーした6つの基本的なタクティクスを
使用することができないかを念頭に置きながら、
タクティカルな試合をしてみましょう!
では皆さん、また次の記事まで、Good Luck and Have Fun!!

ツイート


記事へ戻る

inserted by FC2 system