項目の簡単な説明:
初心者向け | 星が多いほど、初心者にお勧めできる本です。 |
読みやすさ | そのまんまですね。 |
面白さ | これもそのまんまですね。 |
局面図 | 星が多いほど、局面図が豊富です。 |
後味 | 星が多いほど、読了後の後味の良い本です。 |
By 渡辺暁
渡辺暁さんの、「ここからはじめるチェス」に続く2作目です。
「ここからはじめるチェス」と違い、この本では基本的な駒の動き
などをカバーしていません。第一部でいきなり終盤のレッスンという
レベルの高い領域に飛び込むので、「ここから始めるチェス」、または他の入門書で
基本をマスターしてからこの本を読む方がいいでしょう。
個人的なお勧めは第二部のLesson2、「局面をどう評価するか」。
チェスプレーヤーの永遠のテーマである「局面評価」を、伝説のチェスプレーヤー、
ボビーフィッシャーの棋譜を使って分かりやすく解説しています。
日本語でこれだけの内容、特にチェスの考え方を丁寧に
書いてくれている書籍はとても貴重です。時たま局面図のミスが
あったりもしますが、それを差し引いても是非手に入れる価値のある一冊でしょう。
初心者向け | ★★☆☆☆ |
読みやすさ | ★★★☆☆ |
面白さ | ★★★★☆ |
局面図 | ★★★☆☆ |
後味 | ★★★★☆ |
By ブルース・パンドルフィーニ
鈴木知道 訳
もし誰かがShinに、「Shinにとって、チェスのバイブルと言える本は何?」
と聞いてきたら、間違いなくこのディープブルーvs.カスパロフを選ぶでしょう。
この本は1997年にスーパーコンピューターであるディープブルーと、当時の
世界チャンピオンであったカスパロフの6番勝負の様子を描いています。
コンピューターが強いということを漠然と知っている人はいるでしょうが、
Shinはこの本を読み、初めてコンピューターの本当の強さ、そして怖さを
体験しました。ディープブルーvsカスパロフというと、カスパロフがわずか19手で
沈められた第6ゲームを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、Shinの
お気に入りは第5ゲーム。本書から引用させてもらいますが。。。
「多くのプレーヤーが、白のgポーンの昇格を止められないと悟った時、
あきらめて局面の解析をやめてしまうであろう。そして、この素晴らしい
ドローに持ち込むアイディアに気づかなかっただろう。クイーン損の局面を
前にすれば、だれもが戦闘意欲を失ってしまう。しかし、いつどんな局面でも
全ての手を読むスーパーコンピュータはこの限りではなかった。このゲームでは、
量が質を生んだのだ。そしてこの芸術的ともいうべき手順を見つけたことに
よって、あらためてディープブルーの強さを知らしめたのだ。」
(ディープブルーvs.カスパロフ 第5ゲーム まさに「機械」のドローより pg.139)
とんでもなく不利に見えるポジションでも、黙々と最善手を
探し続けるディープブルーは、「不気味」としか言いようがありません。
感情の見えない相手と戦い続けるのは、並大抵の精神力では
持たないでしょう。カスパロフはマッチには負けましたが、
そんな相手に立ち向かった勇気は賛美に値すると思います。
余談ですが、ブックレビューを書くためにもう一回この本を読み返していたら、
Shinが最近はまってしまった「進撃の巨人」(笑)に似ているなぁ、と思いました。
何を考えているのかまったく分からない、不気味な敵に対して挑む人間。。。
なんか似ていると思いませんか?もし「進撃のディープブルー」
のような漫画が出ていたら、日本にチェスブームが来てたかも!?(笑)
[Deep Blue / photo: Marshall Astor]
普通に考えれば簡単にわかる
こんなでけぇヤツには
勝てねぇってことぐらい・・・
初心者向け | ★★☆☆☆ |
読みやすさ | ★★★★★ |
面白さ | ★★★★★ |
局面図 | ★★★☆☆ |
後味 | ★☆☆☆☆ |
By 小島慎也
日本チェス界のトッププレーヤー、小島慎也さんが監修を務めた
チェスの入門書です。タイトルに書いてある通り、本を開くと
すぐに少年少女が登場する(フルカラーの)マンガが出てきます。
本を構成する4つのレッスンの始めに6ページほどのマンガがあり、
その後にマンガの登場人物達を交えながらレッスンに出てくるコンセプトを
説明するという手法を取っていて、登場人物の会話を
楽しみながらチェスに触れることができるはずです。
この本の特徴はその圧倒的な局面図の数で、矢印はもちろん、注目
してほしいマスに色を付けることにより、チェスを始めたばかりの
人にも分かりやすい作りとなっています。レッスンの途中には
「やってみよう」というコーナーがあり、読者がレッスンで出てきた
コンセプトを理解しているか、再確認することができるのもプラス。
まとめ - チェスアイテムでも紹介しようと思ったほど優秀な入門書ですが、
まとめを書いた時にこの本は日本に置いていたため、持っていないことにした
「ここからはじめるチェス」と接戦の上、惜しくも敗れてしまったので、
この機会にブックレビューを書くことにしました。
レッスンの終わりにあるチェスコラムが読み物として非常に
面白く、コラム:チェスが出てくる小説・マンガ・映画で
Shinが大ファンである「名探偵コナン」について少し触れられていた
時は、思わず笑みがこぼれてしまいました(笑)。
マンガということで、低年齢向けの本だと思う方がいるかも
しれませんが、それ以外の方でも十分楽しみながら
チェスを学ぶことができる、いい本だと思います。
初心者向け | ★★★★★ |
読みやすさ | ★★★★★ |
面白さ | ★★★★★ |
局面図 | ★★★★★ |
後味 | ★★★☆☆ |
By Bruce Albertson & Fred Wilson
Shinが初級者ガイドで紹介した、タクティクス本です。
自分が持っているものは1999年のもので、かなり古いですが、
昨年Kindle版が出たようですね。タイトルの通り、
タクティクスの問題を303問出題していて、答えが分からない時は
本の終わりにある解答と解説を見るといった感じです。
初級者ガイドに書いたように、タクティクスの問題を
種類別に分けているところが好印象です。この本は
6章(フォーク、ピン、ディスカバードアタック&スキュアー、メイティングアタック、
ガードを外す、その他)で構成されており、最終章(83問)以外は
それぞれ50問が収録されています。
本に収録されている問題はそれほど難しくなく、
少し腕が立つプレーヤーならスラスラと解けるはずです。
かなり強いプレーヤーには物足りないと感じるかもしれませんが、
大会前のウォームアップには最適だと思います。
本の中身は全て英語ですが、タクティクスの問題が
メインなので、英語が苦手な方でもある程度は
大丈夫でしょう。解答に付いている解説は、
答えが分かればなんとなく意味も分かるはずです。
初心者向け | ★★★★☆ |
読みやすさ | ★★★☆☆ |
面白さ | ★★★☆☆ |
局面図 | ★★★★★ |
後味 | ★★★★☆ |
By Mark Dvoretsky
知る人ぞ知る、エンドゲームを扱った名著です。
400ページほどありますが、その全てがエンドゲーム解説に
使われており、ポーン・エンドゲームを始め、ほぼ全ての
エンドゲームの局面について言及しています。
一つのコンセプトを解説した後にExercisesと称した
問題が2-3個出てきますが、これがとんでもなく難しいです。
Shinの正答率は10%ほど。もっと低いかもしれません。
Shinがエンドゲームを知らなさすぎるだけかもしれませんが。。。
扱う内容のレベルが高いこともあり、Shinはレーティング2000を超える
までは、この本を手に取らない方がいいと思っています。
書いてある内容は物凄く役に立つものなので、チェスプレーヤーの間での
評価はかなり高いです。2008年のU18世界選手権で優勝タイ、
銅メダルとIMタイトルを獲得して大ブレークした、今はFIDEレート2600ほどの
GM Sam Shanklandは、当時のインタビューで「エンドゲームを鍛えるためには
どうすればいいか?」という問いに対して「Dvoretsky's Endgame Manualを
読むこと」と答えています。その他の有名GM達もエンドゲームと言えば
この本を勧めるほど人気の書籍で、棋力が上がってきて、そろそろエンドゲームを
本格的に始めるかー、といった人は是非手に入れるべきでしょう。
303 Tricky Chess Tacticsと同じく内容は全て英語ですが、
こちらは解説が物凄く多いので、英語の苦手な方は避けた方がいいと思います。
初心者向け | ☆☆☆☆☆ |
読みやすさ | ★★☆☆☆ |
面白さ | ★★★★☆ |
局面図 | ★★★☆☆ |
後味 | ★★★★★ |
By Dorian Rogozenko
Shinが2005年(!)頃から使い始め、現役から退くまで
メインウエポンとして愛用していたSicilian Sveshnikov変化の
定跡本です。ちなみにSveshnikovはこんなオープニング。
黒の5...e5!?がトレードマークの一手です。
本書では第一章でいきなり白の6手目から始まる分岐を
カバーしており、Shinが書いているAccelerated Dragon入門
のような入門書と違い、既にSveshnikovの基本を
知っている人が更に理解を深めるための本という、
非常にマニアックな書籍です。とはいえ341ページを使って
Sveshnikov変化の分岐をたっぷり説明してくれるので、
Sveshnikov使いだったShinはこの本に大変お世話になりました。
本全体を通して読むというよりは、Sveshnikovを指してみて
よく分からない変化に遭遇した時に、この本を参考書として
読むといった使い方が一番合っていると思います。
ただ読むだけでは、頭に入りにくいでしょうしね。
マニアックな定跡本なので、初心者にはお勧めできません。
加えて豊富な解説が全て英語なので、英語が苦手な方は
上記のDvoretsky's Endgame Manual同様、避けた方がいいでしょう。
ただSveshnikov自体は高いレベルでも通用するオープニングなので、
英語が読めてSveshnikovのことをもっと知りたい
レアな人は、手に入れて損はしないでしょう。
初心者向け | ☆☆☆☆☆ |
読みやすさ | ★★☆☆☆ |
面白さ | ★★★☆☆ |
局面図 | ★★☆☆☆ |
後味 | ★★★★★ |
By 渡井美代子
2003年に出版された、恐らく日本で最も普及している
オールカラーの入門書です。「はじめての」と銘打っているだけ
あって、駒の動かし方や棋譜の取り方の部分はよく
書かれています。特に、駒の動かし方の部分で
局面図を多く使って、動けるマスや動けないマスを
丁寧に説明しているのは高ポイント。
様々な駒割りでのチェックメイトの仕方や、
「いろいろなチェックメイト」と称した有名な
チェックメイトの形を紹介しているのも、
中々チェックメイトができない初心者にとって
非常に役立つはずです。
その反面、ちょっとしたところで構成ミスがあるのがマイナス。
例えば駒の動かし方と、オープニングの指し方
(中央を支配する、駒を展開する、など)
を説明した後の練習問題では、フォークを決める手や
2手メイトを見つける必要のある問題があり、
初心者の混乱を防ぐため「序盤の基本テクニック」より、
少し後の「攻め手、決め手のテクニック」での
練習問題で出題するべきでした。
最近は渡井さんより棋力の高い、FMタイトル保持者が
書いている「ここからはじめるチェス」や
「マンガで覚える 図解チェスの基本」などと言った、
手の解説が豊富な入門書が多いので、Shinがこれから
チェスを始める方にはそれらの本を勧めるでしょう。
ですが、日本に国際タイトル保持者があまりいなかった
10年前、2003年にこれだけの本を書かれたのは
評価されるべきだと思います。
初心者向け | ★★★★★ |
読みやすさ | ★★★☆☆ |
面白さ | ★★☆☆☆ |
局面図 | ★★★★★ |
後味 | ★★★☆☆ |
By 権田源太郎
通算12回全日本チャンピオンの称号を獲得したことのある、
権田源太郎さんが書かれたチェス書籍です。
Shinが読んだ感じでは、チェスの入門書というよりも
「渡辺暁のチェス講義」のような、中~上級者向けの
書籍だと思います。
「はじめに」の部分で、「かなり上級の方が読まれても
参考になることまでを含んでいます」と書かれて
いるように、チェスの色々な考え方の説明は
さすが元全日本チャンピオンといったところです。
例えば「序盤のすすめ方」では、オープニングを
指す上で大事な考え方が4つほど書かれており、
それぞれの部分に実際の手順を付け加えることで、
それらを疎かにするとどうなるかということがよく分かります。
「局面評価」の部分でも、局面上のプラスの要素と
マイナスの要素を説明した後に、方針の決定の仕方を
著者の実戦を使って説明するなど、理にかなった
チェスの考え方の重要性を教えてくれるでしょう。
内容のレベルが高い反面、これからチェスを始めたいと
いった方にはあまり向いていないと思います。
第一章の「チェスとは」では、駒の形や名称、動き方を
説明する前にいきなりステールメイトの局面が出てくるので、
チェスをまったく知らない方は少し混乱してしまうかもしれません。
本書は局面図よりも文章が圧倒的に多いので、
読み物が好きな方にお勧めと言えるでしょう。
ただ、局面図が少ないせいで、目の前に駒と盤を
置いていなければ、本書で出てくる手順を追うのは
難しいと感じました。大会の合間に軽く読む本というよりは、
家でチェス盤と共にじっくりチェスを勉強するための
本だと思います。
初心者向け | ★★☆☆☆ |
読みやすさ | ★★★☆☆ |
面白さ | ★★★★☆ |
局面図 | ★☆☆☆☆ |
後味 | ★★★★★ |