〜初級者ガイド: A Letter to those who want to Improve〜

By Shin Uesugi

こんにちは!記念すべき最初の記事として、初級者を対象とした物を書きました。
タイトルの和訳は「上達したい人達への便り」。
記事のテーマは「初級者が上達し、Elo(レーティング)を上げるためにはどうすればいいのか?」です。
レーティングいくつくらいが初級者なのかというのは意見が分かれると思いますが、この記事では1200未満としています。
先に書いておきますが、このガイドは結構長いです。時間が取れた時に読んでみてください。

~目次~

初級者ガイド0: プロローグ

初級者ガイド1: ただ取り

1.1: 誰にでも起こること

1.2: 駒と友達になる

1.3: Shinがやっていた「遊び」

初級者ガイド2: タクティクス

2.1: タクティクスの是非を決める「駒の価値」

2.2: 紙の効果

2.3: タクティクスはパズルのようなもの

3.最後に

初級者ガイド0: プロローグ

いきなりですが、昔話をします。
Shinがチェスを始めたのは小学校4年生の秋、父が取り出してきた古いチェスセットで駒の動きを覚えたのがきっかけでした。
通っていた小学校にチェスクラブがあるというので入部し、クラブ内のトーナメントにも出場しました。
駒の動きを覚えたばかりのShinは、チェス歴一年以上の友人さえも倒して「チェスってちょろいんだなwww」と
嫌な奴ムード全開で天狗になっていたはずです(口には出してないですよ!)。ですが、わずか10歳のShinは
そこである少年と対戦して人生の厳しさを思い知ることになります。


この少年に大敗を喫して、Shinは最初のチェスクラブの大会で3位入賞。初心者にとっては信じられない
ほどの好成績ですが、負けず嫌いで悔しがりなShinにとっては屈辱でした。
そして驚いたことに、チェスクラブのメンバーのほとんどが、この少年の同じ罠に引っかかって負けていたのです。

初級者ガイド1: ただ取り

チェスというのはどういうゲームでしょう?
自分の駒を動かしながら相手のキングを追い詰める。。。簡単に言えばそういうものです。
チェスは数のゲームでもあります。相手より兵力が多ければ多いほど相手のキングを追い詰めやすくなるからですね。
Shinはガイド作成という名目上、Chess.comのストーカー機能1を駆使して結構な量の
初級者〜中級者の試合を見させてもらいました。そこで目に付いたのが駒のただ取り、ただ取られ、それらの見逃し
が非常に多いということです。例えば勝勢でも、駒の利きを見逃してクイーンやピースをただで取られたせいで負けた
なんてことが多々ありました。チェスは一度でも駒をただ取りされてしまうと逆転が非常に難しいゲームなので、
如何にただ取られを防ぐかというのはチェスプレーヤーの永遠のテーマでもあります。

1-Chess.comのプレミアムメンバーは他のメンバーの試合を見たり、保存することができます。

1.1: 誰にでも起こること

どんなに強いプレーヤーでも駒をただ取りされるということはあります。有名なもので言えば、
2006年に当時世界チャンピオンであったVladimir Kramnikがコンピュータープログラム
であるDeep Fritzに対して一手メイト(いわゆるキングのただ取り)を見逃すという事件がありました。


ただ、高レートのプレーヤーはただ取りをされるということが非常に少なく、
ただ取られの頻度を少なくすることは確実に棋力とレートの向上につながります。

1.2: 駒と友達になる

さてどうやって駒のただ取られを少なくするのか。まずは、駒と友達になりましょう。
何かスポーツを始める時に「○○と友達になろう!」というフレーズがありますが、チェスも同じことです。
Shinが大学でバドミントンを始めた頃はラケットでバドミントンの羽根を打ち上げたりして、とにかく
ラケット、羽根と友達になるところから始めました。結果、人間の方の友達は少なくなってしまいましたが。。。w
それはさておき、チェスの駒と友達になるためには、駒のことを良く知っていないと駄目ですよね。
動きはもちろん、どんなタクティクス(後述)が得意なのか、価値はいくつなのか、etc。
考え方も工夫しましょう。どんな使い方をすれば相手が駒の利きを見落としてくれるんだろう?
例えばビショップは利き筋が長いので自陣の後ろから相手を睨んでいるように使ってみたらどうかな?
少しでもいいので駒の動きの確認も兼ねて、普段からチェス駒のことを考えてみてください。

1.3: Shinがやっていた「遊び」

ここでShinが現役チェスプレーヤーだった頃によくやっていた遊び(?)を少し紹介したいと思います。
Shinの家のダイニングにはテーブルから少し離れたところにチェス盤が置いてありました。
食べることが大好きなShinは食事ができる数分前からダイニングテーブルに着席しているわけですが、
その数分間ふらっとチェス盤のほうに歩いて駒を動かしていました。何気ないことですが、こんな小さい
ことの繰り返しがチェス駒と「友達」になるには十分でした。

初級者ガイド2: タクティクス

レーティング1200弱までなってくると、見え見えの駒取りスレット(=狙い)などにはすぐ気付くでしょう。
ただし、見えにくいのがただ取り以上のタクティクスを駆使したスレットです。プロローグでは、クイーンがフォークを決めていますね。
Shinは、タクティクスを「駒得をする、駒損を避けるためのツール」と捉えており、チェスで勝つために
一番重要なものだと考えています。前述の「ただ取り」は、駒の利きさえ理解していれば分かる最も簡単なタクティクスです。
ただ取り以上の基本的なタクティクスは大きく分けて4種類あります。フォーク、ピン、スキュアー、ディスカバードアタック。
これらはチェスの入門書やWeb上では
チェス入門の7.テクニック(初級)で見ることができるので、
ここではそれらの説明を省きます。しかし、どんな壮大なタクティクスも元をただせば小さな基本的なタクティクスの集まりです。
基本的なタクティクスの名前とどういうものなのかは知っておきましょう。

2.1: タクティクスの是非を決める「駒の価値」

どのチェスの入門書にも、この駒の価値は○○だというのが書いています。
ポーンが1点、ナイト&ビショップが3点、ルークが5点、クイーンが9点、キングは∞点ですね。
「駒と友達になる」の部分で少し触れましたが、タクティクスを使用する際に重要になります。
タクティクスの目的は「タクティクス終了時に、タクティクス中に取った駒の価値の合計が取られた駒の価値の合計より多く」することです。
簡単に言えば、タクティクス終了時にルーク(5点)が取られ、代わりにナイトを二つ(3+3=6点)取れるなら、そのタクティクスは合格となります。
実際に見てみましょう。


2.2: 紙の効果

タクティクスを鍛えようとなると、色々とトレーニングの方法が考えられます。
一番手軽なのはChess TempoやChess Tactics Server、またはChess.comのTactics Trainer(有料)
などのオンライントレーニングでしょうか。しかし、初級者の内は本でのトレーニングを勧めます。
何故本、または問題を紙にプリントしたものを勧めるのかというと。。。
オンラインの問題では自分が指す→コンピューターが決められた手を指す→それに対して。。。という風に続きます。
例えばオンラインの問題を解く時、なんとなく「これっぽい」手を指したらコンピューターが手を返してくれた!なんてことが時々起きます。
しかし、本の中では駒が動かないのでタクティクスを全て頭の中で検証する必要があり、局面のイメージ力が鍛えられます。
当然OTBの試合では駒を動かして検証することが許されないので、タクティクスを頭の中で計算し終わってから指す必要があります。
これって本を使ってタクティクスの問題を解くのに似てますよね?
Shinはタクティカル、ダイナミックな棋風のプレーヤーですが、昔コーチがプリントしてくれたタクティクスの問題や
この本で問題を解きまくったことが役に立っていると思います。



Shinのリサーチ不足かもしれませんが、オンラインの問題をカテゴリー分けして出題してくれるサイトがないことも気になりました。
この本では基本のタクティクスを分けて出題してくれるので、何問も解けば基本をマスターすることができます。
結構古い本なので、新しいタクティクスのいい本などもあるかもしれません。

2.3: タクティクスはパズルのようなもの

少し前に、壮大なタクティクスは小さな基本のタクティクスの集まりと書きました。
それでは最後にShinの試合で実際に起こった複雑なタクティクスを見てみましょう。
ベストゲーム解説で扱った試合ですが、解説を初級者向けに変更しています。


解説が長いですが、分かりやすく書いたつもりなので読んでみてください。
ここで注目すべき点は:

  • タクティクスのベースは駒得するという概念。

  • 駒を頭の中で動かして計算。駒の利きは見逃さない。

  • 一番基本の「ただ取り」から、基本のタクティクスを組み合わせている。

  • 手順が長くて、それだけを見ると物凄く複雑ですよね。
    でも、これはただ簡単なタクティクスを組み合わせて応用しただけです。
    単純なコンセプトですが、組み合わせ方によってはGMを倒す武器にもなりえます。
    これ以降更にタクティクスの戦いが続きますが、それは6/1のベストゲーム解説でどうぞ。

    3. 最後に

    ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。
    ちゃんと読んでくれた方なら分かると思いますが、これを読んだだけで初級者を卒業できるわけではありません。
    駒と友達になったり、タクティクスを鍛えたり、局面のイメージ力をつけたり。。。
    これらはShinが書いた物を参考にして、自分にあったトレーニング方法を見つけてください。
    そして、もしこのガイドが役に立つと思ったのであれば、他のチェスプレーヤー達にもシェアしてあげてください。
    では皆さん、Good Luck and Have Fun!!

    ツイート

    記事へ戻る

    inserted by FC2 system