〜Accelerated Dragon入門編3 Maroczy Bind〜

By Shin Uesugi

皆さんこんにちは!今回は、Accelerated Dragon特有の変化、
Maroczy Bindがどんなものなのかを見ていきましょう。

入門編1入門編2では、4.Qxd4と黒陣に速攻をかけてくる
変化に対してどう指すべきかということを書きました。



それに対してMaroczy Bindは、白がd4のポーンをナイトで取り返し、c2-c4と突くことで
d5の地点を支配しようという変化です。この変化は4.Qxd4とする変化と違い、
d5の地点を長期的に支配することでスペースを多く取った白が、ゆっくりと
黒を押しつぶそうというもの。その代わり、白は白マスにポーンを配置する
陣形になりやすいので、黒は黒マスをうまく使ってカウンターを作ることができます。



何故これが、Accelerated Dragon特有の変化なのかを理解するためには、
Sicilian Dragonがどんなオープニングなのかを知っている必要があります。


Dragon変化では、黒の4...Nf6に対し白が5.Nc3とe4のポーンを守り、
それから黒がg6-Bg7とフィアンケットを組んでいきます。
ここで注目してほしいのは、黒が4...Nf6と指したため、白は
c2-c4と突く暇がないということです。Accelerated Dragonの
変化で早めに...Nf6と指して、c2-c4と突かせないという選択肢もありますが、
Accelerated Dragonではd7-d6と指していないため、どこかで白にe4-e5と
突かれる可能性があります。個人的に、Maroczy Bindはそこまで恐れる
必要のない変化だと思うので、これに対してどう指すべきかを考えていきましょう。



では、実際にMaroczy Bindの手順を見ていきます。


黒は早速d4のナイトを攻撃することにより、相手の出方を伺います。
Maroczy Bindには、白は大きく分けて二つの指し方があり、一つは
このナイトを6.Be3と守り、d4の地点にキープする指し方、
もう一つはナイトをc2の地点に逃がす指し方です。最もポピュラーなのは
ビショップで守る手ですが、それを理解するためにはナイトをc2に引く手のアイデアを
知っている必要があるため、この記事ではそちらの方からカバーしていきます。


この手は、ナイトを逃すだけではなく、将来的にクイーンサイドでのポーンの前進を
サポートしています。例えばこのポジションでb2-b4と指すのはa1のルークが落ちるため、
自殺行為に等しいですが、Nc3-Be3-Qd2と組めば、b2-b4
からa2-a3と、中央からクイーンサイドにかけてスペースを取ることができます。
更に、一般的にクイーンサイドのポーンを突いたらドラゴンビショップの斜線が開き、
a1のルークが落ちることを利用したタクティクスが生じる可能性がありますが、
c2のナイトはa1のルークを守る働きもしています。



この手の短所は、ドラゴンビショップの道を開いてしまうのと、
ナイトを何度も動かしてしまうため、駒の展開が遅れるということです。
黒はその事を利用して、白の展開の仕方をコントロールすることができます。


黒はキャスリングをする前に、8...Nd7と一旦Bxc3+の筋を見せておくのが正確な手順です。
Nd7-Nc5と、ドラゴンビショップの道を開けながらe4のポーンにプレッシャーをかけるのは、
Accelerated Dragonでよくあるマヌーバリングなので、是非覚えておいてください。
Shinが上記で白のb2-b4とクイーンサイドのポーンを突く手に触れたのは、このナイトの
絶好の位置である、c5の拠点を奪うものだからです。



ここで白は、少し考える必要がでてきます。自然に組むならBe3-Qd2
としたいのですが、9.Be3に対しては...Bxc3+!という手が存在します。


ドラゴンビショップを簡単に手放してしまうのは不自然に見えるかもしれませんが、
入門編2でも触れたように、c6のナイトがd4とe5の地点に利いているので、
白が黒マスを使って攻撃するのは簡単ではありません。更に、6.Nc2と
引いたのはクイーンサイドのポーンの前進をサポートしていると言いましたが、
上のポジションではb2のポーンがc3に移動しているので、クイーンサイドの
ポーン突きというアイデア自体がなくなってしまっています。黒は、将来的に
Nc5-Be6-Rc8からcファイルのダブルポーンを狙う楽しみがあり、
ダブルビショップを持たれても互角に戦うことができるでしょう。
なので、ここで白の最もポピュラーな手は9.Bd2としてナイトを守る手です。
黒の8...Nd7!という手が、間接的に白のBe3-Qd2という自然な展開の仕方を
防いでいるのが分かるでしょうか?


10...0-0の代わりに...Bxc3とすれば、e4のポーンが落ちるように見えますが、
11.Bxc3と返されたらh8のルークに当たってしまいますよね。両方ともキャスリングした後、
白は11.b4!とポーンをサクリファイスするのが最も攻撃的な指し方です。
もう一つ考えられる手は11.f3としてe4のポーンを守る手ですが、黒には
11...a5!とc5のナイトを固定することができます。次にa5-a4とaファイルのポーンを
伸ばしていくと、クイーンサイドでスペースを取るのは黒となってしまい、
Nc2と引いた意味がなくなってしまいます。こうなってはあまり面白くないので、
白はポーンを捨ててでも攻めを狙うのが、このNc2と引く変化の真骨頂です。



上の図は、11.f3とした場合のポジションですね。ナイトをc2に引いてしまった
ことにより、白陣がやや窮屈になっているのが分かると思います。
では、最も攻撃的な11.b4を見てみましょう。


もし黒がポーンを取りたければ、上記のようにドラゴンビショップをc3のナイトと交換、
その後に守りの外れたeポーンを取るといった感じになります。このポーンを取る変化は
黒に問題ないはずですが、先ほどのドラゴンビショップを交換する変化と違い、
a1-h8の斜線が完全に開いてしまっているため、白のb2のビショップが強力な駒になっています。
この変化は少し危険なものなので、入門編としてShinがお勧めするのは11...Ne6と引き、
d4の地点をコントロールする一手です。


このポジションは、黒に問題ないと言えるでしょう。d4の地点をきっちり押さえ、
白の白マスビショップを取ってからBe6と組めば、白がやや良いとはいえども
互角に持ち込めるはずです。この変化は5/23の試合解説でも扱って
いるので、そちらの方も合わせてチェックしてみてください。11...Ne6は、
非常に手堅い指し方ですが、黒番で勝ちを狙いたいなら11...Bxc3として
ポーンを取り、ポジションを複雑にするオプションもあります。

白がナイトをc2に引く変化は、これくらいで終わりとします。
次の記事では、白番で最もポピュラーなBe3としてナイトを
守る変化をカバーしたいと思います。それでは皆さん、
次の記事まで、Good Luck and Have Fun!!

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