〜Sicilian Dragon 9.Nxd4変化: Taming the Dragon〜

By Shin Uesugi

皆さんこんにちは!Shin's チェスラボでは、Shinが気になった定跡に対して
行った研究手順を紹介していきます。いきなり全ての変化をカバーするのは
さすがに無理なので、範囲を絞って少しずつ書いていこうと思います。
もしShin'sチェスラボで紹介された定跡に興味があるのなら、
この研究をベースにして自分だけの新手を編み出せるかもしれません。
今回はSicilian Dragonの変化の一つを紹介します。


これがDragon変化の始まりですね。ここから少し進めていきましょう。


これでDragonの9.Nxd4変化となりました。この手はナイトを交換することによって
e6に白マスビショップを置き、クイーンサイドにキャスリングした白キングを狙う
ことを可能としています。ただ、白がBxd4と取り返した時にa1-h8の斜線を
コントロールされてしまい、Dragon特有の黒マスからの攻撃が難しくなってしまいます。
では、ここからまた少し進めてみましょう。


白の11.Kb1!は間接的に黒のアイデアを防いでいます。
黒はQa5から更にa2のポーンにプレッシャーをかけたいのですが、
そうすると白にタクティクスを決められてしまいます。


このタクティクスが存在するので、黒はQa5と指すために一工夫する必要があります。
a1-h8の斜線から攻めることができないため、黒はなんとかしてa2への攻めを
作らないと、白からh4-h5と攻め倒されてしまいます。
では、黒からQa5と指すための工夫を見てみましょう。


黒はQc7-Qa5と2手使いましたが、目的のa5の地点に到達することができました。
ではここで白が前と同じアイデアを使い、14.Nd5と指すことはできるでしょうか?検証してみましょう。


14.Nd5は成立しませんでしたね。f8にいたルークを動かしたおかげで黒はKf8!と
指すことができました。では14.Nd5とせずに続けましょう。


14.fxg6と指す手もあり、一般的にはそちらの方がいい手とされています。
しかし、定跡をあまり知らない方ならこっちを選ぶ可能性もあるでしょう。
実際ここから白がアドバンテージを取る方法はあまり知られていないので、
格下のプレーヤー相手にこう指して問題なかった、なんて人もいるでしょう。
今回の研究では、この14.hxg6と取る変化を検証、そして何故14.fxg6
の方がいい手とされているのかを見ていきます。では続きを見てみましょう。


白の16.Bd3は黒からの...b5を見越した一手です。
何故この手が...b5に対応している手なのでしょう?


この18.e5!が強烈な一手で、ここから黒のポジションが崩壊してしまいます。
黒のベストムーブは18.dxe5ですが、何故ナイトを逃げる手は駄目なのでしょう?


ではそれが駄目だったので、18.dxe5と取った場合の変化を見てみましょう。


あんまり16.b5と指す手は黒としては面白くないようですね。
黒はここでもう一つ手があります。個人的には恐らくこれがベストムーブでしょう。


ビショップの交換を迫ることで、16.b5と指した時に出てきたBxg6と切られる変化をなくし、
その後にb5-b4と指して攻めるアイデアですね。こう指されると、白はアドバンテージを取るために
少し攻め方を変える必要があります。


この18.Qc1!という手は非常にトリッキーな手で、白からNd5と指す手を可能としています。
例えば18.Nd5 Nxd5 19.Bxg7 Kxg7と進めば、Qh6+からの攻撃が強力です。
なので、黒は多少自陣に弱点を作っても、Nd5と指されるのを防ぐ必要があります。


今まで指されている試合では、ここで白は19.g4と指しています。ですが、ここで19.Rd3!?
と指すのがShinの研究で見つけた新手です。この手のアイデアは何でしょう?
黒はe6と指したことによってd6のポーンが非常に弱くなっています。d6のポーンは将来的に
d6-d5と突かない限り、長期的な弱点として残りますよね。それに対して白は明確な
弱点がなく、3段目にいるルークが守りによく利いているので、
実戦的に見て黒はプランの立て方が非常に難しいと言えます。
では、もう少し見てみましょう。

この20.Na2!?は黒からのb5-b4を完全に防いでいます。
19.d5は20.Qf4!によって成立しませんでしたが、白ナイトがa2へ
そっぽを向いたので、今なら指せるんじゃないでしょうか?実際に見てみましょう。


Rxd5が非常に強力なエクスチェンジサクリファイスです。黒は取るしかないですが、
そこから白の駒が一斉に黒キングへ襲い掛かります。


黒は20.d5と指さなくてもいいですが、d6のポーンが長期的な弱点と
なってしまうのは避けたいでしょう。人間にとって劣勢のポジションをずっと耐えきるというのは
苦痛なので、この変化は実戦的に見て白のほうが遥かに指しやすいと言えます。

今回の研究はこの辺で終わりとなりますが、最初に言った通り、
Sicilian Dragonには色々な変化があります。
もちろんShinはそれらの研究もしていますが、今回研究していた時に色々な
タクティクスや面白い変化があったので、Shin's チェスラボとして紹介させていただきました。
この研究はShin一人で行いました。読者の皆さんがここから研究を進めてみたら、
この変化に対抗する変化や新手、あるいはこの変化の穴などが出てくるかもしれません。
Dragonは結構研究されつくしている定跡というイメージがありますが、まだまだ未知の領域が沢山あります。
この記事を読んで、オープニング研究の楽しさや新手を編み出す面白さなどを
感じてくれた人がいたのなら、下のツイートボタンでシェアしていただけるとうれしいです。
では皆さん、また次の記事まで、Good Luck and Have Fun!!

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