By Shin Uesugi

皆さんこんばんわ!久しぶりの更新です。
Shinは11日まで、Washington Internationalに
参加、そして今日、自分の住処であるバークレーの
アパートに帰ってきました!まずは簡単に、
今大会の戦績を振り返ってみましょう。

R 対戦相手 FIDEレート FIDE国籍 オープニング 結果
1 IM Darwin Yang W 2480 USA French Defense 1/2
2 GM Gildardo Garcia B 2393 COL Sicilian Alapin 0
3 WIM Prathiba Yuvarajan W 2174 IND Scotch Gambit 1
4 IM Roberto Martin Del Campo B 2386 MEX Accelerated Dragon 1
5 IM Kayden Troff W 2428 USA Sicilian Najdorf 0
6 IM Nazi Paikidze B 2377 GEO Sicilian 2.b3 0
7 WFM Sabrina Chevannes W 2160 ENG Caro-kann Panov 1/2
8 FM Ian Thompson B 2260 ENG English 1
9 FM Atulya Shetty W 2341 USA French Defense 1/2

Shinは、3勝3敗3分けで4.5ポイントを獲得。
相手の平均レート2333に対して戦績がイーブン
だったので、パフォーマンスは2333でした。
2年半もまともなFIDE大会に出場せず、FMレベルの
パフォーマンスを残せたのは、自分でもよくやったと思います。

ただ、内容自体はあまり良くなかったと感じました。
特に6、7ラウンドはそれぞれやや良し、優勢の局面から
とんでもないブランダーで負け、ドローとなってしまっています。
少し優勢になったら相手を甘くみすぎて、油断して
ミスをするというのはShinの悪いところですね。

IM Darwin Yangに対しても、圧倒的有利なポジションから
決めきれずに、最後はK+R vs K+Rとなりドロー。
自分の勝ちに対する執着心の薄さが露呈してしまいました。

ただ、トーナメント自体のクオリティーは、決戦前々夜
書いた通りアメリカ屈指の高さで、プレーヤー達は
かなりエンジョイしていた風に見えました。



トーナメントホールはこんな感じ。右の写真の部屋では、
今大会のスポンサーであるChess.comのポスターが
貼ってありました。スポンサーがついたせいか、去年より
参加費が下がり、賞金額が上がったようです。



今大会では、次のラウンドのペアリングが携帯に
メッセージとして送られてきました。ペアリングをチェックしにいく
必要がなかったので、試合直前までホテルの部屋で
プレパレーションをすることができます。



朝のラウンドは、パン類とコーヒーが無料でついてきます。
プレーヤー達は、最初はパンを取るのを躊躇していた
ようですが、今回3個目のIMノームを獲得してIM Electと
なったFM Alex Ostrovskiy君の父、Anatolyさんが
先陣を切ったことにより、他の皆も次々と取り始めていました。



午後のラウンドには、パウンドケーキやクッキーが
差し入れられます。試合中は頭が疲れるので、
甘いものが欲しくなりますよね〜。
まあ、Shinは元々甘いものが大好物なわけですが。。。(笑)



Washington Internationalの文字が入ったペンもゲット。
簡単なものですが、いい記念になりますね。会場には、
Chess.comのペンやステッカーなども置いてありました。
そういえばShinの友達の一人は、Washington
Internationalのペンを使って全敗したけど、
Chess.comのペンを使い始めた途端負けなしだったとか。。。



大会のことだけを書いてもあれなので、ベストゲームの解説を
させてもらいますね。これは第4ラウンドで、IM Roberto Martin
Del Campo (名前が長い!)さんとやった試合です。

試合解説 vs IM Roberto Martin Del Campo



相手が3.d4と指すのは予想していましたが、5.Be2!?は
予想外の一手でした。しかし、このラインも一応勉強していたので、
冷静に対処します。5.Be2!?のアイデアは、b1のナイトを
展開しないことにより、c2-c4とMaroczy Bindの筋を残して
おくことです。ただ、相手の過去の試合を見る限りでは
Maroczy Bindを指さない方なので、何となく
Classical Variationになるんではないかと思っていました。


Accelerated DragonはDragon変化と違い、
d7-d6が入っていないので、一手でd7-d5と中央から
反撃を仕掛けることができます。白はナイトをb3に引き、
クイーンの縦利きを使ってd7-d5を防いでいるのが分かるでしょうか。



少し進み、11.Bf1と指されたポジションで、Shinは
ここからどう指すか、方針を決める必要がありました。


相手が11.Bf1と指した理由は、e4のポーンをルークで
守ることにより、Nd5と飛ぶことができるからです。
d5にナイトが居座られると厄介なので、例えば
11...Rc8 12.Nd5と進めば、Shinは12...Bxd5と
取る必要があります。そうなるとビショップを取られた上に、
白がexd5と取り返した後にe1にいるルークがよく利いて
いるので、黒としては面白くない展開だと思いました。



ここでShinが思いついた手は、ビショップを手放すけれど、
駒の展開でリードを取り、中央の厚みで勝負する手です。


Shinは11...Nb4と指し、白のNd5と飛ぶ手を防いでいます。
その代わりにd4の地点の支配を失ったので、相手はそれを
利用してNd4-Nxe6とShinの白マスビショップを取ってきました。
確かにビショップはナイトより少し強い駒ですが、白は
このビショップを取るためにナイトを5回(f3-d4-b3-d4-e6)
動かしています。そのせいで、白は駒の展開が遅れてしまいました。

e6のポーンがダブルポーンになっていますが、中央の
要所を押さえているので、どちらかというと
これは「いいダブルポーン」だと思います。

相手は14.g3と指してきました。Bh3としてe6のポーンを
狙う手を準備しています。このポーン、どうやって守ればいいのでしょうか?


16...Rc6!!が絶妙手で、白はこれ以上e6のポーンに
プレッシャーをかけることができません。できればc6のルークを
どかしたいのですが、白マスビショップがまったく別の
斜線にいるため、このルークを攻撃できないのが分かるでしょうか。


相手の展開が遅いことを利用して、Shinは17...d4!!と
仕掛けました。18.Qxd4に対しては...Nxc2でのフォークが
あるため、白はこれを取ることができません。

白の19.Nxd4に対して...Qb6!!も用意の一手。
オンリームーブである20.Be3の後に...Nxe3と白の
黒マスビショップを消しました。クイーンが絶好の
斜線にいますが、ここから黒は何か手を作れるでしょうか?


21...Nxe5!!が強烈な一手で、これで白がポーンダウンになります。
このナイトを取るのが自然な手ですが、黒には...Rd8!!という
返し技が存在します。dファイルと、黒クイーンの斜線からの
ピンが強力だということが、分かると思います。



e3のルークでナイトを守ることができますが、その後に
Bxe5!!とされると、持ち堪えることができません。
本譜では、白はナイトを取らずにキングを逃がしましたが。。。


相手は23...Nf7と引く手を完全に見落としていた模様。
d4のナイトを守り切れなくなってしまいました。


あと2手でメイトになるので、ここで相手が投了。
自分の得意分野であるタクティクスが冴えた
試合だったと思います。

最終ラウンド、苦しい局面を粘りに粘ってドローを
取ったShinには、嬉しいサプライズが待っていました。
U2300でIM Leon Piasetski氏と共にトップタイ、
奨学金を除けば、今までで最高額の$825を手にしました。



実はPiasetski氏は、2011年のPhiladelphia
Internationalで小島さんと対局していて、
日本に住んでいたこともある方です。
どこかで名前を聞いたことがあったのですが、
思い出せない内に大会が終わってしまい、
結局話をすることができませんでした。残念。

Shinが2年半もFIDE大会に出ていなくても、
これだけのパフォーマンスを残せたのは、
普段から行っているトレーニングのおかげだと思います。

ICCでの実戦トレーニングはもちろんですが、
ShinはChesspublishing.comという有料サイトで、
最新のオープニングセオリーの解説がついている
データベースをダウンロードしていました。
これのおかげで、第一線から退いていたShinでも、
何とかオープニングでいい形を築くことができたのだと思います。
ちなみにShinは、「Dragons」、「Open Sicilians」、
そして「Daring Defences (グリュンフェルドなど)」の
三つのセクションに登録しています。毎月更新されて、
その都度データベースをアップデートするという感じです。

最後になりますが、やっぱりチェス大会は楽しいですね。
試合合間の雑談や、ブリッツ、そしてバグハウスなど、
存分に夏休み最後のイベントを楽しんできました。
ただ、やっぱり自分はチェスにあまり向いていないと
思ったので、これからは観戦勢として、チェス大会を
訪れるという可能性が高そうです(笑)。

大会の結果などは、こちらからどうぞ。

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