〜Tournament Review: 2013サマーオープン〜

By Shin Uesugi

皆さんこんにちは!今年のサマーオープンは二日コースに42名、
一日コースに12名ほどが参加と大盛況だったようです。今回は、
そのサマーオープンのレビューを書いてみました。

~目次~

1. 賞金の話

2. クラス分けの話

3. 運営の話

4. 最後に

1. 賞金の話



JCAの
ホームページにはA、B各クラス1-3位まで賞品券と書かれていましたが、
今回は現金で支給されたようです。Shinが出場した
去年もそうだったような気がしますが。。。JCAで売っている、
市販よりやや高いチェス用品にしか使えない賞品券より、
何にでも使える賞金の方が受け取る側も嬉しいでしょう。
結構重要なことだと思うので、次回開かれる大会では
入賞したら何がもらえるのか(お金なら、その金額も)、
ホームページに正しい情報を載せておきましょう。

最近面白そうな賞金(?)を実施している大会
があったので、ちょっと紹介したいと思います。
これはChess.comの姉妹サイト、ChessKid.comで
開かれたオンラインの大会です。

8歳以下、10歳以下、12歳以下などのセクションがあり、
小さな子供にお金をそのまま上げるのも何だかなぁと
思ったのか、この大会の賞金はアメリカの
トップコーチ陣から購入したレッスン
でした。
具体的には、1位が225ドル分のレッスン、2位が
175ドル分のレッスン、3位が150ドル分のレッスンなど。
これらのお金は、大会のオーガナイザーが指定したコーチ達の
レッスン料として使えるようです。いわゆる「レッスン券」ですね。

伸び盛りの子供にとってはプロのコーチ陣からレッスンを
受けるメリットがあり、アメリカチェス界としては
将来アメリカを背負って立つチェスプレーヤー達を
育てるメリット、更にコーチ陣は仕事が増える(笑)という、
多くの人にメリットがある素晴らしい賞金システムだと思います。

例えばこのアイデアを日本のチェス大会(サマーオープン)で
応用してみると、Bクラスの賞金と参加費を少し減らす
代わりにレッスン券を付け加えるなどといったことが
考えられます。全日本ジュニア選手権や女子選手権にも
トロフィー以外にレッスン券を付けるというのもありですね。

ただし、日本にはチェスコーチの人数が少なく、
スケジュール調整のことを考えるだけでも無理に思えます。
更にジュニア選手権には、時々2000オーバークラスの子が
出場、優勝することも。。。そういった子達にチェスを
教えれる日本のプレーヤーはほとんどいないでしょう。そうなると、
レッスン券のアイデアは意味がなくなりますね。まあ、
あくまでこれは一つの面白そうなアイデアですので、
日本でもっとチェスが普及して、チェスコーチが増えて
くればいずれ実施することができるかもしれませんね。

2. クラス分けの話

今年のサマーオープン(&Shinが去年出場したJCAの大会)
で、Shinが特に直さなければいけないと思ったのは、
JCAの「オープントーナメント」のクラス分けの仕方です。

現在のJCAのオープン大会は、参加者の人数に
応じてAクラス、Bクラスにクラス分けをするという手法を
取っています。2013サマーオープンでは、42名の
参加者を20人と22人のグループに分けていましたね。
個人的には、このやり方が日本チェス界の成長を
妨げている一因
のように思えます。チェス大会、
少なくとも「オープン」と銘打っている大会は、
プレーヤー達を強制的にクラス分けするべきではありません。

Shinはチェスプレーヤーが大会に参加する
理由に、「自分より強い、格上の人たちと指すことができる」
というものがあると思っています。他の理由は
「入賞したら賞金がもらえる」、「他のプレーヤー達と
交流できる」、「長い持ち時間で指したい」、「チェス界の
美人プレーヤーをGETする(笑)」などでしょうか。

ちなみにShinがこの記事で使う格上とは、
自分よりレートの高いプレーヤーのことです。
自分より強いプレーヤーと指すという経験は、
強くなる上で絶対に必要なものです。

Shinは大会3戦目、まだUSCFレーティングが
1300程度だった時に、アメリカのオープン大会に
出場しました。結果は1.5pt/5とあまり良くないもの
でしたが、当時の自分より遥かに格上の1900台の
プレーヤー達と指すことができたのはとてもいい経験でした。
格上プレーヤーにドローを取れた時は嬉しくて自信がついたし、
負けた時は彼らと自分の何が違うのかをコーチと
一緒に話し合うことができました。

Shinは、今まで伸び悩んだ時期があまりありません
でしたが、これは常にオープン大会や自分のレート帯より
上のセクションに参加し、格上プレーヤーと対戦
した経験が多かったからだと思います。

では、今年のサマーオープンはどうでしょう。
例えばBクラスに出場した1500台のプレーヤーは、
最高でも自分と同レベル、多くの試合は自分
より格下のプレーヤーと指していた印象がありました。

格下プレーヤーと指して勝利するのは
誰でも気持ちがいいと思います。ですが、
それらの試合は2000オーバークラスの方達と
指した試合に比べ、学ぶことが遥かに少ないはずです。

特に2013サマーオープンに出場したジュニアの
プレーヤー、例えばBクラスで優勝した
ヒーバート・ケンジ君のようなプレーヤーには
、Aクラスで出場する選択肢を与えたほうが
よかったのではないでしょうか?彼は、自分以外の
プレーヤーが全て格上だった今年の全日本選手権で
5pt/11と、Aクラスでも十分通用する成績を挙げていました。

そんな彼が今回のサマーオープンでBクラスに入って
プレーしていたのは、観戦していたShinとしては
ちょっと不自然に思えました。アメリカでも、実力は
あるけど賞金が欲しいからレーティング1600以下
(日本でいうBクラス)に出場したいという子はいます。
チェスを指してお金がもらえるというのは凄く嬉しいことだし、
それはそれでいいと思います。ですが、全てのプレーヤーが
そういうわけではありません。

中には「1500台だけど、自分は2000オーバーにも通用する!」、
「自分が格上相手にどれだけやれるか知りたい!」、
「国を代表するレベルのプレーヤーと対局して何かを学びたい」
という人もいるでしょう。少年時代のShinは、
まさにそんなプレーヤーでした。そのような参加者の
選択肢を奪い、レーティングだけを
見てクラス分けをしている今のJCAの「オープン大会」は、
何かがおかしいのじゃないでしょうか?

Shinは、これからのオープン大会は
「参加者に選択肢を与える」ものであってほしいです。
Bクラスに出て賞金や盾をもらいたい人、大会で
優勝することによって自信をつけたい人はBクラスに
出場すればいいでしょう。格上プレーヤーと対局して、
自分がどれだけ戦えるかを見たい人や、何かを学びたい人は
Aクラスに出場すればいいでしょう。チェス大会の
楽しみ方は人それぞれ、みんな違ってみんないいと思います。

Shinが今まで出場していた大会は、レーティング別の
セクションがありましたが、自分のレート帯より上の
セクションに出るか出ないかは参加者の自由です。
オープン大会には誰でも出ることができます。
レーティング1200のプレーヤーが、1ラウンド不戦勝の後にGMと
指しているところも見たことがあります。もちろん一瞬で
負けていましたが、GMと指せるということでとても嬉しそうでした。

「とんでもなく格下のプレーヤーとやるのは嫌だ!」、
「負けたりドローでもしたらレートが物凄く下がってしまう!」、
などというプレーヤーもいるかもしれません。ですが、
格下のプレーヤーと指すことはそんなに悪いことなのでしょうか?
プレーヤーに実力が備わっているのなら、格下の
プレーヤーには問題なく勝つことができるでしょう。
ただで1ポイントもらえます。

その1ポイントは無駄なものだと思いますか?
無駄ではありませんよね。格下のプレーヤーから
ポイントを取ることによって、ポイントを重ねてきた
格上プレーヤーと指すチャンスが生まれます。
その1ポイントのおかげで、Aクラスで賞金が取れた
ということもありますよね。もし自分より600ほど
レーティングが下の相手に負けるのなら、それが
今の自分の実力だと割り切って、前に進むしかないでしょう。
その負けを糧にして強くなるのか、何もしないのかはその人の自由です。

まとめると、AクラスとBクラス(例えばレーティング1600未満)
の2つのクラスを作るのはいいですが、エントリー時に
参加者にどちらのクラスに参加したいか、選ばせて
あげようということです。もし1つのクラスの人数が多く
なりすぎて、もう1つのクラスの人数が足りなくなって
しまうようなら、クラスを合併させることもできるでしょう
(そもそもオープントーナメントなのだからクラスは1つでいいような。。。)。
今回のサマーオープンに限って言えば、AクラスとBクラスの
賞金が同じなので、参加者に選択肢を与えていたと
してもBクラスには十分参加者が集まっていたと思います。
JCAが、始めからホームページに正しい
賞金情報を載せていればの話ですがね。

3. 運営、プレーヤーの話

今大会は、ある一つの事件を除き、非常に
スムーズに運営されていたと思います。試合はちゃんと
時間通りに始まっていたし、ペアリングと順位表も
全試合終了後すぐに作られるなど、運営スタッフの
レベルアップが見られました。なのでこれといって
話すことはないのですが、今回のサマーオープンで
起こった事件について、少し話すことにします。

この試合は、Bクラスの下位ボードで行われていた
試合で、Shinはポジションをちらっと見ただけですが、
運営スタッフによると「h6に白のポーンがあり、
キングと先のポーン以外に駒はなし。黒のキングはすでに
g8にいるのでプロモーションの心配もなし。」
といったポジションを延々と続けていたようです。


こんな感じですね。ある程度の実力があるプレーヤーなら、
これはドローだと一目で分かるでしょう。
Shinはちらっと見て「あー、これはドローだな」と思い、
速報を更新するために検討室へ向かいましたが、
ずっと指していたようですね。両プレーヤーとも
「同一局面が3回現れたらドロー」や「50手ルール」などは
知らなかったようで、運営スタッフが「同一局面3回起こったら
引き分けというルールを知らなかったようなので、
止めた局面から3回同一局面がでたら引き分けとしますと
いうことにして、問題なく同一局面3回以上起こったのでドローとした」
と裁定したことによって、無事ドローとなったようです。

Shinは、この裁定は正しいものだと思いました。
本音を言えば、「これはドローです。納得できないのなら
ルールブックを見てください」と裁定しても良かったくらいですが、
運営スタッフの説明の方が揉め事が起きないで済むでしょう。

基本的に、チェスの対局に第三者が介入するのは
望ましいことではありません。ですが、延々に指し続けて
いたのなら、黒はキングをh8-g8-h8と動かしていたのでしょう。
それならば白の勝ちはなし、一手30秒加算の大会
なので、試合が一生続く可能性もあります(まずないでしょうが)。

この場合、次の試合の開始時間が遅れるなどと
いったことを危惧したなら、運営スタッフは試合に介入し、
ドローと裁定するべきです。運営スタッフの裁定は
まったく問題ありませんが、これは大会に出場する
プレーヤーが、ルールを知っていることの重要性を
明らかにしたと言えるでしょう。

白のプレーヤーはこれがドローだと理解している
必要があるし、それより重要なのは黒のプレーヤーが
3回同一局面でドロー、または50手ルールでドロー
といったものを理解している必要があります。
白のプレーヤーはメイティングマテリアル
(チェックメイトにできる最低限の駒数。上記のポジションの
場合はクイーンになれるかもしれないhポーン)を持っているので、
延々と指し続けることができます。

よって、このポジションでドローだと指摘するのは、
黒のプレーヤーであるべきです。運営スタッフの介入は、
周りのプレーヤーの集中力を削いでしまいます。
ですが、延々と続けられてしまったらトーナメントの
進行に支障が出るので、介入する他ありません。
チェストーナメントは、自分だけがプレーしているわけ
ではないですよね。自分がルールを知らないことによって、
知らない内に他のプレーヤーに迷惑をかけているかもしれません。
大会に出場する時は、最低限のルールは理解しておきましょう。
まとめ:チェスアイテムで紹介した「ここから始めるチェス」には
基本的なルールが載っているので、一通り読んでいれば大丈夫だと思います。

4. 最後に

レビューといっても、改善点を言うようなものだけに
なってしまいましたが、観戦していた者としては
2013サマーオープンは非常に楽しいトーナメントでした。
同じ週末に新潟で国際親善チェス大会が開催されたのにも
関わらず、二日コースに去年より10人多い、42名の
チェスプレーヤーが参加したのはもの凄いことです。
まだ色々と改善すべきところはあるはずですが、
日本チェス界は確実にいい方向へ向かっていると思います。
最後に、2013サマーオープン優勝者の小島さん、おめでとうございます!
そして運営スタッフとプレーヤー(&見学者)の皆さん、お疲れ様でした!!

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