こんにちは！入門編1で出てきたアイデアの復習は終わりましたか？
今回は、前回の終わりで出てきた7...Nb6から始まる変化を見ていきます。
7...Nb6と指した後のポジションはこちら。黒の二つのナイトが、協力して4段目を押さえていましたね。
白のポピュラーな応手は二つ、8.Bf4と8.Nc3があります。どちらも黒の...d5というカウンターを
牽制しています。他に...d5を牽制する手は8.c4というものがありますが、ただでさえ展開が
遅れている白が、更に展開を遅らせるのは非常に危険です。
これで将来的にg7に居座るドラゴンビショップの道が開き、...Bf5という
駒の展開をしながらクイーンを攻撃する手のある黒の方が指しやすいでしょう。
8.c4はShinが千葉チェスクラブでヒーバート・ケンジ君と対戦した時に
出てきた手で、Shinはその時9...Bf5と指しましたが、後で見直してみると
9...Qxd6が正確で、最もいい手だと思います。
それでは白の最も毒のある応手、8.Nc3から見ていきましょう。
この手は、黒がd7-d5と指した時にアンパサンとし、Qxd6に対してNb5と飛ぶ準備をしています。
その後、Bf4と指すことによってc7の地点でのフォークを狙おうというアイデアです。
こんな感じですね。黒の正確な手は11...Qb8としてBf4を防ぐものですが、
間違った逃げ方をしてしまうとこんなポジションになり、Nc7+とNd6+両方の手に
対する受けがなくなってしまいます。11...Qb8とした後でも正確な手を指し続ける必要があり、
8.Nc3に対して...d5と指す手はあまりお勧めできません。
Shinが入門編として勧めるのは、...Bg7と組み、白のセンターをf7-f6から崩す方法です。
白の9手目ですが、9.Bf4以外にあまり有効な手はありません。
黒は...Bg7と指したことによりキャスリングの準備が完了し、
キングの安全性さえ確保できたらNc3-b5と飛ぶ手が怖くなくなります。
白のアイデアはクイーンサイドへのキャスリングを見せることで、d7-d5を牽制しようというもの。
例えば黒が9...0-0としたら、白はクイーンサイドにキャスリングして、黒を押し込めることができます。
9...f6と指すことにより、黒はfファイルを開き、キャスリングした後にf4のビショップに
プレッシャーをかけることができます。更にドラゴンビショップの斜線が開いたので、
黒にはBxc3として白のポーンストラクチャーを崩す選択肢もできました。
このポジションは、黒にとって黒マスビショップがなく怖いように見えますが、
c6のナイトが黒マスの要所要所を押さえていて、cファイルの孤立ダブルポーンを
狙う楽しみがあります。これは黒に問題ないでしょう。
白マスビショップを交換した後、Nb6-c4と入り込む手もありますしね。
それでは8手目まで戻りましょう。白のもう一つの有効な手は、8.Bf4です。
この手のアイデアは至ってシンプルで、黒のd7-d5に対し、アンパサンと取った後に
d6のポーンを守ろうというもの。eファイルでのピンをうまく利用していますね。
こう見ると、黒はd7-d5と指せないように見えますが、ここでの黒のベストムーブは
8...d5!とポーンを捨てて展開を早める手です。
黒は、白クイーンを攻撃しながら駒の展開をすることができています。
白は確かにポーンアップですが、クイーンを何度も動かしており、
e2にいるクイーンがf1のビショップの展開を邪魔したりと、
駒の配置がちぐはぐです。黒は10...Nd5!とナイトを中央に戻し、
ビショップを攻撃しながらどこかでNdb4としてc2の地点を狙います。
白は一旦11.Be5として黒にf7-f6と突かせ、ドラゴンビショップの
道を塞がせた後にBg3と逃げるのが正確な手順です。ですが、ここで黒は
白の展開が遅いことを利用して、白陣に速攻を仕掛けることができます。
黒の12...Ndb4に対して白は13.Na3とc2のポーンを守るのがオンリームーブですが、
黒の13...Qa5!が絶妙手で、Nc2++からのディスカバードチェックを狙っています。
c2-c3として斜線を防ぐのはNd3+を食らってしまうので、Qd2か0-0-0として守るぐらいしか
白に手はないですが、14.Qd2に対しては14...Bh6!という強力な手が存在します。
両方の斜線からの攻撃に、白が耐えきるのは難しいでしょう。
14.0-0-0に対しても、黒はタクティクスを駆使して攻めることができます。
白の4.Qxd4に対する手筋は、これくらいで切り上げようと思います。
手順を知っていることはもちろん重要ですが、その手の背後にある
アイデアを完璧に理解することが、オープニング上達の近道です。
オープニングをアイデアから理解する方法は、相手が新手を指してきた時にも
役立ちます。今まで指されている手と新手を比べて、新手の
長所と短所を把握し、その短所を突くといった方法ですね。
こんな勉強法は、チェスの一味違った面白さを気付かせてくれるかもしれませんよ。
次の記事は、Maroczy Bindについて扱おうと思っています。
できればジュニア選手権や女子選手権など、夏の大会ラッシュ
までには書き上げたいと思っているのですが、時差が結構ひどく、
すぐ眠くなってしまうのであまり期待しないでいてください（笑）
